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  • 2018/07/24
  • ちょくマガ編集部

愛のギロチン ~Part1「退職の決断」

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自宅があるのは千葉市稲毛区だ。
錦糸町から総武線快速で稲毛駅まで来て、そこから小仲台方面に徒歩10分ほどにあるアパートに部屋を借りている。

本木とは何となく気まずいまま別れた。

本木は本木で真剣に心配してくれていたのだろうし、同情的な慰めももらったが、「ウチに来てください」という言葉はついに出なかった。

帰り道のいつものコンビニエンスストアに、惰性で入る。

自動ドアをくぐり、頭痛に似た酔いを覚えつつ、それでも酒売り場の前に立った。
別段酒が好きなわけではないが、このまま寝られる気もしなかった。

冷蔵庫の中にはギッシリと酒の缶が並んでいる。
俺の隣で、今から一緒に飲むのだろう、若いカップルが一緒につまみを買い込んでいる。

女は細くてスタイルが良かった。どう見ても男物のシャツに部屋着風の短パンを履いている。
一方男は170センチで小太りの俺とはまるで違う、背が高く喧嘩も強そうなイケメンだ。

最近流行りの、アルコール度数の高いチューハイを4本買って店を出た。

何か、思い切り叫びたい気分だった。5月の晴れた夜。

だが、俺の心はドロドロした雲で覆われている。

家の方向へ歩き出しながら1本目を開ける。

喉に流し込んだが、ただ刺激があるだけで、うまくもなんともない。

裏道に一本入れば、月以外の明るさはなかった。

その薄暗さが、自分の人生を表している気がした。特別な才能もなければ、恋人もいない、人生の目標すらない。そして俺は今、会社まで辞めようとしているのだ。

「クソ……」

思わず悪態をついた。その声すら弱々しくて、あまりの情けなさに笑いそうになる。
 
2階建てのアパートは、壁が薄いと有名なウィークリーマンションに毛が生えた程度のものだ。
三角屋根の四角い建物に、階段が外付けされている。
部屋数は12。1階に6戸、2階に6戸、俺の部屋は2階の一番奥だ。

運動不足のせいか、酔いのせいか、あるいは精神的なダメージのせいか、体が重くて階段を登るのに苦労した。

まるで体の中を血ではなくヘドロが流れているような気分。
手すりを掴んで一歩一歩ゆっくり上がっていくと、どこからか声が聞こえた。

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